エネルギーとは、物体が持つ物理量の一つである。
エネルギーには様々な種類があるが、それらのエネルギーの総和は一定である。(エネルギー保存則)
人間は様々なエネルギーを扱うことで自動車を動かしたり、テレビを見たりすることができる。
エネルギーの中でも物体の運動に関係する力学的エネルギーについて本記事では説明する。
運動している物体は速度を持ったり、重力由来の高さ方向のエネルギーを持つ。
これらのエネルギーは物体に仕事をする(物体にエネルギーを与える)ことで物体のエネルギーを変化させて、物体の運動を変えることができる。
物体の持つエネルギーと、そのエネルギーを変化させる仕事について理解することが重要である。
仕事
物体に加えた力\(\overrightarrow{F}\)によって物体が\(\Delta\overrightarrow{x}\)だけ移動した時の力\(\overrightarrow{F}\)がした仕事\(W\)は以下になる。
\begin{eqnarray}
W=\overrightarrow{F}\cdot\Delta\overrightarrow{x}
\end{eqnarray}
これは、\(\overrightarrow{F}\)と\(\Delta\overrightarrow{x}\)の内積である。
また、力\(\overrightarrow{F}\)が単位時間あたりにする仕事を仕事率\(P\)と呼び、以下になる。
\begin{eqnarray}
P&=&\frac{W}{\Delta t}=\frac{\overrightarrow{F}\cdot\Delta\overrightarrow{x}}{\Delta t}=\overrightarrow{F}\cdot\overrightarrow{v}\\
\\
\Delta t&:&力を加えた時間\\
\overrightarrow{v}&:&\Delta tの間に進んだ距離(速度)
\end{eqnarray}
これは、力\(\overrightarrow{F}\)と物体の速度\(\overrightarrow{v}\)の内積である。
力学的エネルギー
運動エネルギー
運動エネルギーとは物体が運動をしている(速度を持つ)時に持つエネルギーのことである。
物体が運動している時の運動エネルギー\(K\)は以下である。
\begin{eqnarray}
K&=&\frac{1}{2}mv^2\\
\\
m&:&質量\\
v&:&速度
\end{eqnarray}
この運動エネルギー\(K\)は運動量から物体にかかる仕事を求めることで分かる。
まず、力とは運動量の時間変化である。
よって、力\(F\)は以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
F&=&\frac{d}{dt}\left(mv\right)\\
\\
&=&m\frac{dv}{dt}\\
\\
v&:&速度
\end{eqnarray}
この時、物体が微小な時間\(dt\)の間に進んだ距離は\(vdt\)である。
よって、力\(F\)が微小な時間\(dt\)の間に物体に与えた仕事\(dW\)は力と進んだ距離の積で表すので以下になる。
\begin{eqnarray}
dW=m\frac{dv}{dt}vdt\\
\\
=mvdv
\end{eqnarray}
この微小な仕事\(dW\)を積分すると以下になる。
\begin{eqnarray}
\int dW&=&\int mvdv\\
\\
&=&\frac{1}{2}mv^2
\end{eqnarray}
よって、力\(F\)が物体にした仕事が運動エネルギーとして変換し、物体は運動をするのである。
【運動量とは】
位置エネルギー
位置エネルギー\(U\)とは任意の基準面(鉛直方向)から距離\(h\)だけ離れた時に物体が持つエネルギーであり、以下のように表せる。
\begin{eqnarray}
U&=&mgh\\
\\
m&:&質量\\
g&:&重力加速度\\
\end{eqnarray}
位置エネルギーとは重力が作り出すポテンシャルのことである。
重力は地球上では常に物体に働く。
ポテンシャル\(U\)は以下で定義する。
\begin{eqnarray}
U&=&-\int m\overrightarrow{g}\cdot d\overrightarrow{y}\\
\\
\overrightarrow{g}&:&重力加速度のベクトル\\
\overrightarrow{y}&:&鉛直方向の位置ベクトル
\end{eqnarray}
ここで、\(m\overrightarrow{g}\cdot d\overrightarrow{y}\)は重力による微小な鉛直方向の位置\(d\overrightarrow{y}\)だけ移動させた時の仕事である。
この内積は鉛直方向上向きを正とすると\(m\overrightarrow{g}\cdot d\overrightarrow{y}=-mgdy\)となる。
ここで、積分を基準面\(y=y_0\)から\(y=h\)まで積分すると以下になる。
\begin{eqnarray}
U=mgh-mgy_0
\end{eqnarray}
この時、基準面を\(y_0=0\)とするとポテンシャル\(U\)は\(mgh\)となることが分かる。
基準面\(y_0=0\)とした理由は、位置エネルギーを考える時は自由に基準面(つまり、位置エネルギーが0になる高さ)を決めていよいからである。
位置エネルギーを考える時に重要なのは高さ\(A\)から高さ\(B\)まで変化した時の位置エネルギーの変化量である。
なので、位置エネルギーの変化に注目すれば、どの高さを基準面としても良い事が分かる。
【積分の方法】
弾性エネルギー
バネを自然長から\(\Delta x\)だけ縮めた(もしくは伸ばした)時、バネにエネルギー\(U_k\)が蓄えられる。
このエネルギー\(U_k\)を弾性エネルギーと呼び、以下で表す。
\begin{eqnarray}
U_k=\frac{1}{2}k\left(\Delta x\right)^2\\
\\
k:バネ定数
\end{eqnarray}
弾性エネルギーはバネの弾性力が作り出すポテンシャルである。
ポテンシャル\(U_k\)は以下で定義する。
\begin{eqnarray}
U_k=-\int\underbrace{-kx}_{弾性力}dx’
\end{eqnarray}
この積分をバネの自然長\(x_0\)から変形量\(\Delta x\)まで積分する。
\begin{eqnarray}
U_k=\frac{1}{2}k\left(\Delta x\right)^2-\frac{1}{2}kx_0^2
\end{eqnarray}
ここで、バネの長さが自然長\(x_0\)の時、弾性力は0であるので、以下を満たす。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{2}kx_0^2=0
\end{eqnarray}
よって、弾性エネルギーは\(U_k=\frac{1}{2}k\left(\Delta x\right)^2\)となる。
【バネの弾性力とは】
力学的エネルギー保存則
物体が運動をしている時、外力が与えられない時は、力学的エネルギー(運動エネルギー、位置エネルギー、弾性エネルギー)の総量は変わらない。
つまり、式で表すと以下になる。
\begin{eqnarray}
K+U+U_k&=&K’+U’+U’_k\\
\\
K,K’&:&t=t_1,t_2の時の運動エネルギー\\
U,U’&:&t=t_1,t_2の時の運動エネルギー\\
U_k,U’_k&:&t=t_1,t_2の時の弾性エネルギー\\
\end{eqnarray}
また、物体に力\(F\)を与えて運動した時は、その力が物体にした仕事\(W\)だけ物体の力学的エネルギーに加えられる。
\begin{eqnarray}
K+U+U_k+W&=&K’+U’+U’_k\\
\\
K,K’&:&t=t_1,t_2の時の運動エネルギー\\
U,U’&:&t=t_1,t_2の時の運動エネルギー\\
U_k,U’_k&:&t=t_1,t_2の時の弾性エネルギー\\
W&:&力Fが物体にした仕事
\end{eqnarray}